中学生とメンタルトレーニング
もしあなたが選手の立場であれば、その年でメンタルトレーニングに興味を持つのはかなり珍しいことでしょう。もちろん悪いことではありません。
その場合は指導者の言うことを自分の知識と照らし合わせて正確に判断していく必要があります。無駄とも言える根性論や過剰なコミニュケーションの強制など、明らかにおかしいなと思えるところがあったら見切りをつけるのも良いでしょう。メンタルトレーニングの知識を、適切な指導者と巡り合うためのリトマス試験紙とするのです。
とはいえ中学生がこの講座を見ている可能性は低いでしょうし、本題に入りましょう。あなたが指導者の立場である場合、中学生に対してメンタルトレーニングを施す際は、あることに注意しなければなりません。
それは、彼らには将来があるということです。
中学生はまだまだ人生について深く考える必要のある年代であり、自分の将来を決めていない子供の方が圧倒的に多いのです。少なくとも、スポーツで食っていこうと言う人は少数派でしょう。

そのような子供たちを相手にする場合は、相手にも将来があることを考えて、その可能性の芽を極力つぶしてしまわないように注意深くトレーニングを行う必要があります。中学生は身体的には大いに成長しますし、スポーツにおいてもグングン伸びる時期ではあるのですが、未完成な身体に過剰な圧力をかけたら壊れてしまうこともあります。
本格的なメンタルトレーニングよりは、むしろ指導対象の可能性を伸ばしてスポーツの楽しさを教えることに重点を置きましょう。もちろん、生徒がメンタルトレーニングを理解して、本格的なトレーニングを求める場合はその限りではありません。
スポーツと学び
中学生はスポーツを通して様々なことを学んでいきます。難しい技術を習得するために悩み、何度も練習し、ときには挫折しながら、時には勝利の味を噛み締めながら、その鋭い感受性を伸ばしていきます。
スポーツを通じて友人関係が変わってしまうこともあるでしょうし、スポーツと勉強を両立させるのもとても難しいことです。中学生は学生生活とスポーツを両立させる過程で、人生における大切なことをたくさん学んでいきます。
指導者はメンタルトレーニングを意識しながら、その内容に含まれる「己の体と心の特徴を知る」「目標設定し計画的に達成していく」「プラス思考になる」といった練習が彼らの人生にどのような影響及ぼすかを考えていかねばなりません。
メンタルトレーニングを通して教えたことを礎にして、彼らが他の問題に直面したときに対処法を講じることができるようになるなら、たとえスポーツで伸びなかったとしてもそれだけでもメンタルトレーニングをやった意味はあるのだと考えましょう。
実践が大好き
中学生の知識量はさすがに高校生や大学生、大人に比べれば劣っています。小学校の6年間通っていたからといって、考えたり思考を深めたりするのが得意な子ばかりではありません。
サイキングアップやメディテーションについても、その歴史や背景について詳しく説明するよりは、実際にやってみたほうがはるかに理解が進みますし、効果が身体に現れることで体感的な理解を得ることができます。
中学生を指導する時は、理論よりむしろ実践に重きを置くように心がけましょう。
高校生とメンタルトレーニング
高校生で本格的にスポーツやっている場合は、メンタルトレーニングに対してある程度親しんでいる可能性があります。日本でメンタルトレーニングが普及し始めてから30年近く経ちました。現代の高校生は、その効果を初めて目の当たりにした世代の子供たちです。まだまだまだ頭が柔軟な世代だということもあり、たとえ初めて聞くようなトレーニングであっても、ちゃんと頭で理解できるなら受け入れてくれる可能性がとても高いのです。
中学生とは違って高校生の場合はスポーツ特待生枠で入学してきた子もたくさんいます。もし彼らがスポーツで結果を残せなかった場合は今後の人生の軌道修正しなければなりませんし、場合によっては奨学金などにも直結するの死活問題になる可能性があります。
また高校生を対象とした全国大会は甲子園を筆頭に公的なものが数多く存在します。そこで結果を残すことでプロの実業団入りや大学の特待生枠を狙う子もいるでしょう。メディアからの注目度も非常に高く、勝たなくてはいけないという重圧は中学生以上です。
したがって、高校生を相手にメンタルトレーニングを行うときは、なるべく本格的に、そして彼らの将来を見据えてより良い選択が行えるよう助力してあげるべきです。
斜に構える高校生
しかし高校生は物事や世の中を斜に構えて批判的に見てしまいがちなところがあります。それに対して、メンタルトレーニングは大きな声で元気よく挨拶したり、自分に声をかけて自分を励ますなど、非常にまっすぐな練習内容となっています。したがって、シニカルなタイプの高校生にはなかなか受け入れ難い訓練でもあるでしょう。
中学生と違って自分なりの練習方法を考えている子もたくさんいますし、方針が違えばぶつかることもあります。恋に勉強、将来の進路など悩むことも多く、ともすればスポーツをする楽しみを見失ってしまいがちです。
高校生は中学生よりさらに変化の激しい時期ですから、トレーニング方法もそれに合わせて柔軟に対応していかなければなりません。あまりにも世の中に対して批判的であるようなら多少は素直な物の見方を教え込む必要もあるかもしれませんが、そんな時であったとしても、相手のことを尊重し、極力合わせてあげる必要があるでしょう。
高校生相手に指導を行うのはとても大変です。また彼らの心理状態に合わせて柔軟に対応するためには、メンタルトレーニングのみならず様々な練習法を知っておく必要があります。知識と経験のない、つまるところ実力のない指導者には、高校生はついてきません。信頼を得るためには指導者として十分な知識があること、またプロのプレイヤーとして指導者足りうる実力があることを示す機会も出てくるでしょう。
メンタルトレーニングに関する正しい知識を持ち、それを適切に運用するために、しっかりとした知識を身に付けてください。