Lesson5-6 イメージトレーニングの実践

試合の準備

Lesson5ではイメージトレーニングを利用したメンタルの強化法をさまざまな観点から説明してきました。

そのイメージトレーニングが力を発揮するのは、やはりなんといっても本番です。今までの練習を試合に応用するために、どのような準備をすればいいでしょうか?

今回のLessonでは、その最終仕上げについて考えていきましょう。

試合に勝つためのプランニング

スポーツの試合に勝つために必要なものは、やはりなんといっても練習です。練習によって身に付けた技術を披露する場が試合であり、基本的には技術の高い方が勝利を収めます。

しかし、最初にご説明したように、本来は実力的には均衡していても、メンタルの差によって勝敗が分かれてしまうことがあります。メンタルトレーニングは心を強化して相手を上回ることを目論んだ練習であり、今までのレッスンで取り扱った内容の練習を繰り返すことでこれを達成することを目標とします。

イメージトレーニングはそのメンタルトレーニングに資するものであり本番を想定して計画を練る段階でもその役割を果たします。練習計画を立案する段階から勝利への明確なイメージを想像し、実際の練習そのイメージに当てはめていくのが指導者の役割です。選手達と勝利のイメージを共有するため、しっかりとしたプランを練り、準備を整えましょう。

プロの下準備

プロの指導者はどのような準備をしているのでしょうか?参考になりそうな例をいくつか挙げてみましょう。

試合会場の下見

そこへ到着するための移動手段、会場の環境、用意された設備、動員される観客の数、風向きや夜間照明の向きなど、チェックするための項目はたくさんあります。

それらを頭に入れることで、試合を行う前に緻密な想像が可能になります。もし試合会場の下見をしていなければ、普段練習しているグラウンドや、まっさらな空間でプレイをイメージしなければなりませんが、やはり具体性を伴わないイメージには限界があります。余裕があるようなら、なるべくきちんと会場の下見をするようにしましょう。

5-6

周囲との人間関係の調整

これは指導者スポーツ選手双方が考えるべきことです。私たちは本来なら他人をコントロールできませんが、試合を控えている段階で周りに援助を期待することは可能です。

家族であれば試合前一週間は食事内容に気をつかってもらうとか、集中して練習するときに邪魔をしないといったお願いを聞いてもらうこともできるでしょう。また、事前にどこでどのような相手と試合をするということがわかっていれば、選手や監督が気付かないところで助言をもらえたりもします。

これは冗談のように聞こえるかもしれませんが、遠征先で試合を行う場合は、その土地の有名なお土産を事前に聞いておくのがオススメです。試合に勝っても負けてもそれなりに楽しみがあると保証されていると、試合そのものが楽しみになりモチベーションも高まりますからね。

マスコミ対策

これは本当にごく一部のスポーツ選手の指導者に要求されることですが、世の中には選手にプレッシャーを与えてでも情報を引き出そうとする記者や、勝手に控え室の中に入り込んでくる報道関係者が存在します。

そういったルール無用の記者を締め出すことで、選手たちが試合前に高めてきたモチベーションを崩されるのをきちんと予防しなければなりません。もちろん、報道陣に対して誠実な態度をとることも大事ですが、選手を守るのが監督や指導者の役目です。

最近ではサッカーの記者がヨーロッパのクラブに所属する選手に対するインタビューを捏造して掲載すると言う事件がありました。そういった横槍で選手に無用な風評被害が発生しないように情報コントロールし、公式に声明を発表するための場を整えておくのも大事です。

試合のシミュレーション

何といっても大事なのは試合そのもののシミュレーションです。選手と指導者で相談し、一日の始まりから集合時間と場所、どこで休憩を取るか、何時に食事を取るか、トイレはどうするかといった細々なことを決めておきます。

そうやって外堀を埋めてから試合そのもののシミュレーションに入りましょう。敵チームとの対峙、サイキングアップ、試合展開に合わせた作戦の打ち合わせ、サインの出し方など様々なことを決めておきます。

すべての計画を立てないといけないと言うわけではありません。試合展開や選手の傾向によっては自由にプレイさせて自主性を尊重する方が上手くいくことがあります。

しかし、ここまで来た方にはもうお分かりいただけていると思いますが、メンタルトレーニングで大切なのは己の体と心をしっかり理解することです。指導者も選手も充分なメンタルトレーニングを積んでいれば、どのような作戦を立てるのがプレイヤーにとって最善であるかは自然と理解できているでしょう。なにせ、お互いの心をしっかり把握しているのですからね。

試合前に計画を立てることは大事ですが、計画を立てられるだけの信頼関係の構築やメンタルトレーニングの練習を欠かさずにやってこないと、計画を立てる意味も薄まってしまうのです。メンタルトレーニングは心理検査から試合本番までちゃんと繋がっているということを念頭において、普段の練習に力を入れていきましょう。