Lesson5-3 プラス思考の習得

プラス思考は簡単じゃない

考え方をポジティブな方向にもっていくのプラス思考といいます。今ではすっかり皆の知る言葉になってしまいましたが、これを実践している人は実はさほど多くないのです。

なぜなら、人間は不安を感じてしまう生き物だから。

マイナス思考に陥るのは簡単です。何故でしょうか?人は失敗をする生き物ですから、成功体験より失敗経験のほうがずっと多く、想像しやすいのです。

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また仮に成功体験を重ねて来れた幸せな人がいるとして、その人は常にプラス思考でしょうか?もちろんそうではありません。成功者だって失敗の恐ろしさを知っていますから、自分がいつ転落してしまうか、いつかは失敗してしまうかもしれないなどと考えてしまい、思考がマイナス方向に触れてしまいがちです。

大勢の観客が見ている前で試合をすると考えてみてください。あなたはそこで勝利を掴み取る自分の姿がイメージできるでしょうか?それとも、観客の前で無様な敗北を晒す自分の姿の方がイメージしやすいでしょうか?前者ならあなたはプラス思考かもしれませんが、後者であればその考え方を矯正する必要があります。マイナス思考の人間は人間味があるとは言えますが、スポーツにおいてここぞと言う時に力を発揮するには、マイナス思考は足かせになってしまいます。

では、プラス思考になるためにはどうすれば良いのでしょうか?

プラス思考になるための練習

原因を分析する

Lesson2の自己分析でも触れましたが、勝利や敗北の原因を注意深く分析することは極めて重要です。勝てた理由を詳しく分析して、自分の実力によるところが大きいならば、それは自分の自信につながるからです。逆に敗北の理由が自分ではどうしようもないことばかりであれば、自分を責める機会が減りモチベーションを維持しやすくなります。

プラス思考になるために大事なのは、自分ではどうにもならないような出来事に対しては責任を負わないという態度を身に付けることです。

  • 天気が良かった、あるいは悪かった
  • 交通機関が混雑していた
  • たまたま身内に不幸があって集中できなかった

そういった理由に対し責任を負ったところで何かができるわけではありません。しかしそれがスポーツの試合等と結びつくと、雑な分析の裏側に隠れてしまいがちです。自分が負けた理由を「下手だったから」と大雑把に片付けて、結果的に自分には責任がない原因すら背負いこんでしまうと、自分の心に余計な負担をかけてしまうことになります。

したがって、まずは世界をコントロール可能なものと不可能なものに分けてしまいましょう。今から5分間で思いついたものを全てどちらかに仕分けてみて下さい。たとえば、天気などはコントロールの不可能なもの、自分の食事内容はコントロール可能なものです。さぁ、やってみましょう。

いかがでしたでしょうか。

コントロールできるものは意外と少ない

ここで大事なのは、実はコントロールできるものは意外と少ないという事実を知ることです。まず、自分以外の人間はコントロールできません。監督であれチームメイトであれ親兄弟であれ、自分が思い通りに操ることは不可能です。どんなに親しい間柄であっても、その行動や朝の挨拶の一言を自分の思いのままにすることはできません。もし朝起きた時に両親から不吉なこと言われたとしても、それはあなたの努力ではどうしようもないことなのです。

また、健康なども意外とコントロールしづらいものです。食事の内容やベットに入る時間帯といったものはコントロール可能ですが、総合的に見たときの健康はコントロール不可能です。夜中に急に冷え込んだときにたまたま掛け布団を蹴飛ばしていて風邪を引いたとしましょう。対策が打てるでしょうか?

社会に出ると、健康管理も仕事のうちなどと言われたりしますが、人間が管理できるのは健康ではなく自分たちの一つ一つの行動のみです。ゲームのやり過ぎや漫画の読みすぎで夜更かしをしてしまったと言うならあなたに原因があると言えますが、そのような場合のみ自分に責任を帰するべきだと考え、そうでない原因があるにも関わらず「自分が悪かった」とマイナス思考に陥るのは絶対にやめるべきです。

そのようにコントロールできるものとできないもの分けていくと、実は自分の気持ちや行動以外のものはほとんどコントロールできないことに気づきます。

プラス思考になるための練習

プラス思考とは、自分に原因がないことをどんどん思考の外に追いやり、自分が今いる環境におけるベストを追求することと言い換えられます。

それを身に付けるためには、先述の原因分析と、マイナス面を指摘された際に次の成功を想像する練習が必要になってきます。

チームプレーで自分の役割が果たせなかったとしましょう。バレーボールで思わぬ方向にトスを上げてしまった自分を想像してください。おそらくチームメートや監督から叱責が飛んでくるでしょう。しかし、そこで自分はダメな選手なのだと考えるのはNGです。考えるべきは「次はうまくやる」であり、上手くトスを上げた自分の姿をイメージすることです。

プラス思考の練習は、このように些細な失敗をするたびにそれに反発するという形で行うのが良いでしょう。これを一日一時間続けてみます。うまくできたら次は二時間、その次は四時間、持続するようにあればさらに間隔を長くしていき、最終的に一日中プラス思考を維持するのを目標とします。

もちろんスポーツなどの練習をしていない時間もプラス思考の練習に使いましょう。イメージトレーニングのメリットは、必ずしも身体を使う必要がないこと、そしてスポーツと無縁の時間でも行えることにあるのですから。