Lesson4-5 リラクセーションのテクニック

リラクセーションのテクニックを利用する

音楽を利用したセルフコントロールについては、前回のLessonで説明した通りです。今回は音楽ではなく、リラクセーションのテクニックを利用した方法について解説します。

メンタルトレーニングはリラクセーションのプログラムを取り入れています。したがって、運動前に落ち着きたい時などは、リラクセーションのスキルをそのまま応用することが可能です。

Lesson4-3で確認したヘッズアップも、実はリラクセーションプログラムで用いられるテクニックの一種なのです。他にもメンタルトレーニングでは以下のようなテクニックを用います。

セルフマッサージ

肩こりや眼精疲労のマッサージのために首肩腰を揉んだりすることもあると思いますが、これはリラックスのために極めて有効な手段です。テレビでスポーツの実況を見ているとプロのスポーツ選手が首を叩いたり肩を回したりするのを見ることがあるでしょう。もちろんプロだからこそ体の負担が激しいという理由もありますが、あのようにマッサージをすることでリラックスしている側面もあるのです。

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全体的に筋肉の凝り固まっているところをほぐすと、血が流れるようになり、身体が温まってリラックスにつながります。有名なツボである攅竹などを押してみるのも良いでしょう。

顔のマッサージについてはリンパマッサージなどのテクニックを応用し、顎や鎖骨に向けて老廃物を押し流すようにゆっくり指を滑らせて行くという手もあります。ただ一つ注意したいのは、あまり強く力を入れないことです。人間の体はぐっと力を入れたくらいで壊れるようにはできていませんが、スポーツ選手には力があるので、圧し過ぎて組織を壊してしまう恐れがあるのです。リラックスのためのマッサージなのですから、あくまでも優しく行いましょう。

呼吸法

Lesson4-3でも触れましたが、落ち着くための呼吸法を用いることで体と心をリラックス状態にもって行くことも可能です。セルフマッサージの後に「体の次は心」という順番で呼吸法を用いると忘れずに済みます。

方法としては以下のようなものがメジャーです。

  1. 笑顔を作る
  2. 肺から酸素を全て出すように息を吐く
  3. 息を大きく吸い込みながら両手をグーの形にして、胸の前、前方、上、身体の横、といった具合に5秒から10秒ほどかけて腕を動かす
  4. ゆっくりと息を吐きだす

これを繰り返すことで心拍数を落ち着かせ体をリラックス状態にもっていきやすくなります。

サイキングアップ

気分が乗らないときにやる気を出す方法の一つが、このサイキングアップです。聞き慣れない名前ですが、実は私たちも普段からよく使っています。例えば、試合前にベンチの前で円陣を組んで、大きな声を張り上げることがあるでしょう。あれです。

より正確に説明すると、次のようになるでしょう。

試合の前などの緊張しやすいときに、遊びやおふざけの時間入れてリラックスするための方法

遊びはおふざけですから実は方法は何でも良いのです。仲間たちと一緒に試合の前に踊る国もあれば、お互いにふざけて肩を叩きあったり、試合前に漫才をしたり、広いグラウンドでバク宙や側転を披露したりと、様々なバリエーションがあります。

意外に思われるかもしれませんが、ジャンケンポンやあっちむいてホイなどもサイキングアップに使えますし、選手全員でかごめかごめを踊ったりもします。びっくりするかもしれませんが、このように慣れ親しんだ遊びで緊張ほぐすのはとても有効なことなのです。逆に根性論を信奉するコーチにありがちな「気合を入れろ」といった怒鳴り声などは、却って身体を萎縮させてしまうだけであまり効果的ではありません。

スポーツは楽しいものですから、スポーツの前準備にも積極的に楽しみを見出していきましょう。メンタルトレーニングではこれを定期的に繰り返すことで、本番前のサイキングアップの効果を高めていきます。

ただし、サイキングアップにはチームメートが必要ですから、ソロのスポーツや普通の会社員にはなかなか真似ができません。その点ではみんなでプレイするタイプのスポーツ選手に向いたメンタルトレーニングの方法と言えるでしょう。