ゾーン状態とは?
皆さんはゾーン状態という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
記憶力の良い方は、イントロダクションでお話したことを覚えているかもしれませんね。あのときは言葉を出しただけでしたが、今回改めて説明いたしましょう。
ゾーン状態とは、周囲が止まって見えるほどの最高の集中力を発揮した状態のことです。
プロの野球選手が「ボールが止まって見える」と発言するのを聞いたことのある方もいらっしゃるでしょうか。あるいはプロのバスケットボール選手がシュートを放つ前にゴールに入るのを確信したとか、負ける気がしなかったとか。そのように本来の実力以上の力を発揮できてしまう心理状態があるのです。

「火事場の馬鹿力」と言われるものを想像される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本質的には全く異なるものです。火事場の馬鹿力は極限に追い詰められたときに出る力であって、ゾーン状態のときに発揮する力とは異なります。
ゾーン状態は緊張とリラックスのバランスが最良の状態にあるときに発現する状態です。強い力を発揮するために緊張は確かに必要かもしれませんが、それだけでなく、リラックスと調和することでさらに上の力を発揮できるようになるのです。
プロのスポーツ選手は、試合中の最も重要な局面でこの状態に入るために、メンタルトレーニングの訓練をしています。心を鍛えていない選手が緊張で体を震わせている時、メンタルトレーニングの成果を発揮した選手は、最高に力の発揮できる状態に入っている。この差が試合の勝敗につながります。
ゾーン状態に入るためには
最初のLessonでお話しした通り、まず自分がどんな選手であるのかを把握します。そして自分の心理状態や心理傾向に合わせて、メンタルを強くするための訓練を行います。
目標設定はモチベーションを高く保つためのものでしたが、これを繰り返し自分の心理状態をきちんと把握することで、最適の訓練が行える状態を保ちます。
また自分の体を把握することで呼吸や心拍数から心理状態を把握し、それらの体に出る特徴を逆手に取り、日々呼吸や心拍数のコントロールを行うことで、自分の体とメンタルを己の意思である程度はコントロールできるように努めます。
音楽を使うことで気分の上下やメンタルの状態をコントロールしたり、セルフコントロールやサイキングアップを練習に取り入れることで緊張に対する耐性を作り、試合前に練習通りの実力を発揮できる体勢を整えます。
そして、試合本番のまさにその時、メンタルを落ち着かせるための気持ちの切り替えを行いましょう。最初は上手くいかないかもしれませんが、たとえば、勝利BGMを頭の中で流すことで「勝てる」心理状態に持っていったり、呼吸を整えることで身体と心を最善の状態に引き戻すといった行動とれば、おのずと心理状態のコントロールが上手くなります。
そのようなことを繰り返していると、ふとした時に「ボールが止まって見え」たりするようになるのですね。しかし、練習にメンタルトレーニングを取り入れていない場合は、試合中のとっさのセルフコントロールは効きません。
これは、普段車の運転をしない人が、スピードを出すためにどの程度アクセル踏み込めばいいのかわからないのとよく似ています。普段の練習でその感覚をつかみ、いざという時に発揮する。それがメンタルトレーニングの真髄なのです。